7坪ハウスの自宅ショップ“Fika”の大きな窓辺には、ずらりと「ダーラナホース」(ダーラヘスト/Dalahäst)が並んでいます。
毎日のように聞こえてくる「あっ、お馬さんだ!」、「お馬さんが1つ、2つ」、「赤いお馬さんと〜」という、子どもたちのかわいらしい声。
ショップのオープン時から飾っているダーラナホースは、すでに7坪ハウスのシンボルでもあります。
今回は、そんなダーラナホースのあれこれをご紹介します!
幸せを運ぶ馬 ダーラナホース
ダーラナホースとは木彫りの馬のことで、子どものおもちゃとして、インテリア雑貨として、家庭に必ず1つはあるという、スウェーデンを代表する伝統工芸品です。
日本ではダーラナホースという名称で知られていますが、スウェーデンでは「ダーラヘスト/Dalahäst」(単数)、「ダーラヘスター/Dalahästar」(複数)と呼ばれています。
カラフルに色付けされたボディに伝統的な模様が描かれたダーラナホースは、「幸せを運ぶ馬」と言われ、誕生日、結婚祝い、出産祝い、洗礼式などの贈り物として親しまれています。
また、木彫り(おもちゃ、置き物)のみならず、キッチンタオルや鍋つかみ、マグカップなど、多くのプロダクトのモチーフにもなっています。
ダーラナホースの歴史
ダーラナホースは18世紀頃にスウェーデン中部にある「ダーラナ/Dalarna」地方の「ムーラ/Mora」(ダーラナ県ムーラ市)で誕生しました。
西側に位置するムーラが、ダーラナホース発祥の地
ムーラ周辺の村人たちが、日照時間の短くなる冬の仕事が終わった後、子どもたちのおもちゃとして彫った木馬が起源といわれています。
ダーラナホースの原型となる木彫りの馬は、それ以前から存在し、16世紀半ば頃に作られたものが現存する最古のものなのだとか。
(『Dalahästens vagga En samlares dröm』より)
スウェーデンでは、ヴァイキングの時代から馬は神聖な動物とされ、大切にされてきました。
冬は山で切った木材を運び、夏は農地を耕し、また一年中移動手段としても活躍した馬は、さまざまなシーンで人々の生活を助け、ともに暮らしてきた家族でもありました。
(『Dalahästens vagga En samlares dröm』より)
はじまりは、自分の子どもや村の子どもたちのおもちゃだったダーラナホースですが、農作物の行商と一緒に商品としてダーラナホースも売り歩くようになっていきました。
その後、年間を通して生活を支える工芸品として発展していったダーラナホースが、世界的に知られるようになったのは、1939年に開催された「ニューヨーク万国博覧会」でした。
スウェーデンパビリオンの前に置かれた高さ2.8メートル、重さ1トンのダーラナホースは多くの人々の目にとまり、「ダーラナ地方の工芸品」から、一気に「スウェーデンのシンボル」として世界中に知られるようになったのです。
(『Dalahästens vagga En samlares dröm』より)
伝統的な模様「クルビッツ/Krubits」
ダーラナホースにはカラフルな絵が描かれていますが、これはスウェーデンの伝統的な模様「クルビッツ/Krubits」を簡略化したものです。
クルビッツとは、ダーラナ地方に伝わる伝統的な装飾画で、別名「ダールモーレリ/dalmåleri」(ダーラナ・ペインティング)と呼ばれています。
大きな花と葉が特徴的な装飾画は、もともと宗教関連の書物などに見られた絵ですが、1770年代頃から家の壁や天井、家具などに描かれるようになり、一般に広まっていきました。
ダーラナホースに現在のような美しい模様が描かれるようになったのは1830年代からです。
スタンダードカラーは、赤、紺、黒、白地にクルビッツが描かれたダーラナホース。なかでも銅で塗られた赤いダーラナホースが塗装の起源といわれており、もっともポピュラーです。
現在では、ピンクやイエロー、ブルーなどパステルカラーのダーラナホースなども販売されています。
ダーラナホース以外にも、モチーフとしてクルビッツが描かれているプロダクトはたくさんあります。
世界最大のダーラナホース
ダーラナホースはカラーだけでなく、サイズもさまざま。販売されているものだけでも、2cm〜50cm(2cm〜8cm刻み)と、かなり幅があります。
ちなみに、世界最大のダーラナホースは、なんと高さ13メートル、長さ12.8メートル、重さ66.7トン!
1989年にダーラナの「アヴェスタ/Avesta」に設置されました。巨大なダーラナホースは、木馬ではなくコンクリートでできているそうです。
ダーラナホースの2大工房
伝統的なダーラナホースは、主にムーラ郊外にある「ヌスナス/Nusnäs」の「グラナスA. オルソン・ヘムスロイド/Grannas A. Olsson Hemslöjd」と、「ニルス・オルソン・ヘムスロイド/Nils Olsson Hemslöjd」の2つの工房に受け継がれています。
グラナスA. オルソン・ヘムスロイドは、1922年にグラナス・アンダース・オルソン/Grannas Anders Olssonによって設立されました。
彼は9人兄弟の長男であり、弟のニルス/Nilsとジャンヌ/Jannesも兄の仕事を手伝っていましたが、1928年、アンダースの結婚を機に、2人の弟は独立。彼らの新たな工房は、兄であるニルスの名前をとって、ニルス・オルソン・ヘムスロイドと名付けられました。
現在も、彼らの子どもたちが跡を継ぎ、スウェーデンのシンボルであるダーラナホースは脈々と受け継がれています。
(『Dalahästens vagga En samlares dröm』より)
■グラナスA. オルソン・ヘムスロイド/Grannas A. Olsson Hemslöjd のHP
■ニルス・オルソン・ヘムスロイド/Nils Olsson HemslöjdのHP