模型で見る、住居スペースの設計変遷。7坪ハウス流・建築家の選び方(後編)

「建築家ってどうやって選べばいいの?」
結構むずかしい問題だ。
7坪ハウスの場合、決め手はドールハウスのような家の模型だった。
設計から建築、その後の雑誌の取材やイベントまで、7坪ハウスの模型は大活躍してくれた。

**「7坪ハウス流・建築家の選び方」(前編)は、↓こちらをご覧ください。

明るくて開放感のある7坪ハウス〜外観の変遷

2011年4月の最初の設計ミーティング以降、1か月に1回のペースで打ち合わせが行なわれた。相談と変更を繰り返しながら、大枠は約半年かけて決定。
そして、設計の見直しをするたびに、次のミーティングでは図面と一緒に模型も変更されている。最初に抱いた印象どおり、丁寧な仕事っぷりだった。

外観で大きく変わったのは、7坪ハウスのシンボルのひとつである大きな窓が2面から1面になったこと、窓の数が増えたこと、ベランダがついたことなど。とはいえ、外壁の色や家の形などは、ほぼ最初の提案通りだ。

(左)最初の模型。玄関の左隣の面も窓。
(右)最終の模型。住居部分の窓が増え、3階にはベランダ

7坪ハウスは、建ぺい率ギリギリで建てたことから、家の形がちょっと変わった五角形をしている。南側のショップ部分に狭い2面があるのだが、最初は2面とも窓ガラスという設計だった。
ただ、あまりにも家の中が丸見えなのと、逆に外に立っている電信柱が家の中から丸見えで景観もよろしくないということで、1面のみに変更になった。

「7坪ハウスのBIG3」の記事でも書いたように、最初に建築家に出した要望は「開放感があって、明るくて、風通しのいい家」。
そのため、模型の写真や図面のあちこちに窓を書き込んでは、「とにかく窓を増やして欲しい」という要望を毎回のように出していた。結果、ベランダを含め、かなり窓が増えている。

設計が変わるたびに「ここにも窓作れますか?」と
マジックで印をつけて、やたらと窓の増設を希望

唯一、模型には反映されていないけれど、南側の屋根と西側の屋根には天窓もつけた。おかげで、明るくて開放的な家になったのは言うまでもない。とくに3階は東西南北すべてに窓がついていて(東側はベランダ)、一番気持ちのいいスペースだ。

(左)模型。(右)実際に建った家。屋根に天窓がついている

床面積の確保で、住居スペースは大きく変更

さて、室内はというと、こちらは大きく変更している。最大の理由は、なるべく広く床面積を使いたかったこと。
最初の提案では、2階と3階がゆるく4部屋に分かれていた。1階もトレイが個室になっていて(最初の要望通り)、バックヤードもお店と壁で隔てられ独立していた。

最初の設計。幅の狭い壁でゆるく仕切られていた
(左)2階はキッチンとちょっとした書斎スペース。
(右)3階は狭いリビングと和室の寝室スペース

7坪ハウスのシンボルである、「大きな窓」と「大きな棚」は最初からあったので、明るい家にはなったかもしれないし、ショップスペースの開放感は抜群だった。
ただ、住居スペースについての開放感は、最初「う〜ん」という感じだった。

そこで、まず大きく変更したのは、2階から3階へ続く階段の位置だ。部屋の真ん中にあった階段を、すべて北側に収めることにした。

(左)最初の設計。2階から3階への階段が部屋の中央に。
(右)最終設計。階段を北側にまとめた

そして、部屋の仕切り役だった壁を取り払い、2階も3階もひとつの部屋にした。

■2階

(左)最初の設計。キッチンと書斎的なスペース。
(右)最終設計。壁を取り払ったDK。キッチンは壁つけから対面式に変更。

■3階

(左)最初の設計。一人がけの椅子しか置けなかったリビングスペース。
(右)最終設計。小上がりもできて、床面積が広がった

■1階

1階は洗面室とトイレを一緒のスペースにし、バックヤードはショップの大きな棚を隔てたオープン設計へと変わった。

トイレもバックヤードもオープンスタイルに変更

**トレイについては、↓こちらの記事にまとめています。

ショップスペースは天井の高さ以外、最初の提案からほとんど変えていない。もともとは3階の天井まで突き抜けた吹き抜けだったが、3階に小上がりの畳スペースを増床したため、ショップの天井高が低くなった。それでも、5mを超える高さなので、十分に開放感のある空間だ。

(左)最初の設計。ショップの天井が3階まで吹き抜けていた。
(右)最終設計。3階に小上がりができて、天井高が低くなったショップの吹き抜け

こんな感じで、とにかく「どうすれば、床面積をかせげるか」ということを考えながらの修正だった。その他、収納の少なさも気になっていたのだが、階段の位置を変更したり、小上がりを作ったことで、思いがけず収納スペースの確保も実現した。

模型は同じものがバージョンアップされていくので、当時はこうして見比べることはできなかった。改めて模型を見比べてみると、内装はほぼ作り直しだったことに驚くと同時に、つねに1か月間隔で対応してくれていた建築家たちの迅速力にも驚く。

そして、設計が変わっても、変わらず家の中に置かれているミニチュア家具たちの馴染みっぷり。建築家たちが「愛着のある家具が似合う家」を模索してくれていたのだと思う。

憧れの「9坪ハウス」。ウチも障子と畳がほしい! 

おまけの変遷をひとつ。

私には憧れの家がある。「9坪ハウス」だ。
詳しく知りたい方は、ぜひ↓こちらの本を読んでみてください。

9坪ハウスはプロダクト化されているため、全国にいくつか建っている。あるお宅のオープンハウス(9坪ハウス+)に伺ったことがあるのだが、正直、広い家ではなく(7坪ハウスよりは広いですが)、つくりもかなりオープンなので、あっという間に見終わってしまう。にもかかわらず、見れば見るほど「よく考えられている家だな」と感心してしまい、1時間以上も居座ってしまった。

9坪ハウスの素晴らしいところはたくさんあるが、なかでも私が気に入っているのは天井の低い和室と、大きな窓に取り付けられた障子だった。
建築家に、わが家にもどこかに畳と障子がほしいという要望を伝えたのは言うまでもない。

最初の設計では、3階の北側に小さな和室があり、そこに障子のついた窓を作るという提案だった。

(左)外観側から見ると、横長に障子の入った窓。
(右)内装は和室で寝るスペース

結局、大きく設計を変更して、北側が階段スペースになってしまったため、一旦、畳と障子は忘れることにした。

その後、3階に小上がりを作ることになったとき、「畳、敷いてください!」と和スペースが復活。障子も諦めきれず、どうにかならないかと相談した際に提案されたのが、↓こちら。

私のイメージでは、全面障子の引き戸で、開け放てば下のスペースと一体になって広々と見える感じだったが、7坪ハウスは三角屋根のため、それは不可能だった。
「なるほど。こうなってしまうのか・・・」と、模型で見て初めて理解する空間認知力の低さ。

設計・建築期間中、この能力の低さを、ずいぶんと模型に助けられた。
結局採用しなかった設計も、こうして模型で形にしてくれた建築家のおかげで、7坪ハウスの完成度は大きく向上したと思っている。

家ができあがってからは、たくさんの方々に興味を持っていただき、雑誌や書籍に掲載されたり、建築に関するイベントや建築家ならびに私の著書のイベントであちこちの書店に飾られたり、7坪ハウスの模型はかなり働いてくれた。

7坪ハウスの模型は、『BRUTUS』の表紙を飾った
建築事務所の書籍の出版イベントでは、7坪ハウスの模型も一緒に飾られた。
ついでに私の著書も並べてくれた

設計・建築期間中に、建築家が模型をどんどんバージョンアップしてくれたように、本物の7坪ハウスは住人がどんどんアップデートしていこうと思う。