7坪ハウスは、小さいけど、使い方は自由自在。建築家と「店舗つき住居」を建てた理由

7坪ハウスは、小さいけど、使い方は自由自在。建築家と「店舗つき住居」を建てた理由
2019年9月3日

もっとも現実的だと思っていた「都内に家を持つ=マンション」を早々に諦め、消去法で「建築家と家を建てる」ことを決意。
作業的にも金銭的にもハードルが高く、最初は選択肢にさえ入っていなかった「一戸建て」。しかも、最終的には狭い中にショップまで組み込んでしまった。
たった7坪の小さな家も、設計(間取り)次第で使い方が広がる。

「都内に家を持つ=マンション」という固定観念を捨てる

自分の家を持つことは、そう簡単ではない。しかも女性一人でとなるとなおさらだ。
賃貸住宅とは比較できないほど、さまざまなやりとりが派生するし、なんといっても大きくのしかかってくるのが費用だ。

そんな中、都内に家を持つなら、やりとりや費用の面でもっともハードルが低そうなマンションを買う、という認識が自然とでき上がっていた。

分譲マンションのパンフレット請求から「家づくりプロジェクト」は始まった。
そして、1か月も経たないうちに、「都内に家を持つ=マンション」を断念。
主な理由はこんな感じ。

1) 住みたいと思える物件が見つかりそうにないと感じたこと
2) 賃貸同様、管理費、さらには修繕費を毎月支払わないといけないこと
3) 思った以上に高かったこと

実はショールームは1度も見にいっていない。パンフレットだけでマンション購入は諦めた。
建っている場所は違うし、もっともグレードの高い作りになっているであろうホテルのようなショールームが参考になるとは思えなかったからだ。

それと、パンフレットを見て気づいたことがある。
分譲マンションにはファミリー世帯向けが圧倒的に多いということ。

3LDK以上と広いうえに、南向きなど条件のよい場所に陣取っているのもこのクラスの物件だ。単身者向けの1LDK(50平〜60平米程度)は、少ないうえに日当たりの悪そうな向きが多い。
南向きで明るい部屋というのは、賃貸に住んでいるときから、譲れないほど優先順位が高かった。
そうして、分譲マンションの価格は条件がよいほど上がる。

分譲マンションでは、手頃で住みたいと思える物件を探すのは難しいかもしれないと感じた。
それに、続々届くパンフレットを見ているうちに、最初はハードルが高いと思っていた一戸建てが、マンションの価格と比較して、それほど大きな差はないのではと感じたことで、ハードルは少しだけ低くなった。

狭小地に店舗つきの家を建てられるのは建築家しかいない!

「家がほしい」と思った当時、私は会社員だった(家を建てた2年後にフリーランスになる)。勤めていた会社は東京・池袋にあり、自転車で通勤していた。
日々の暮らしのストレスを軽減するために、郊外から都心に引っ越し、満員電車通勤をやめたのだ。

その分、少々家賃は高くなったけど、満員電車のストレスがなくなっただけでなく、それまで通勤にかかっていた時間を使って、ジムに通ったり習い事をしたり、思いがけず充実した日々を手に入れた。
その生活スタイルは変えたくなかったので、必然的に都心に家を建てることになる。

自転車通勤も可能なうえに、交通の便(駅近)もいい場所。

そう考えると、当然ながら狭小地に家を建てることになる。
都心の土地は高いからだ。

結果的に、たった車2台しか停められない、10坪の程度の土地を購入

それともうひとつ、一戸建てに住むなら、ぜひ実現したいことがあった。
「店主になる」ことだ。

当時は会社を辞めるつもりはなかったので、お店をオープンするにしても会社が休日の土日だけ。週のうち2日間、しかもたった数時間のために店舗を借りる選択肢はなかった。

狭小地に店舗つきの家を建てるなんていうわがままを実現してくれるのは、建築家しかいない。

こうして、建築家と一緒に、たった10坪の土地に、たった7坪の家を建て、お店までつけてしまうという「店舗つき住居づくりプロジェクト」は始まった。

暮らし方、働き方に合わせて、家の使い方を変える

「小さくても家がほしい!」「狭小住宅でも店舗をつけたい!」とスタートした家づくりプロジェクトだけど、実際に動き出すと、その狭さに愕然とさせられた。

とくに工事に入ってからは、こんな狭い家に本当に住めるのか、不安で仕方がなかった。建築家に会うたびに、「本当に大丈夫? この家で人間らしい生活ができる?」という質問を繰り返していた。

もっとも不安を感じていた、竣工まで約1か月だった頃の様子。

ところが、できあがってみるとあら不思議。7坪とは思えない開放感のある、「広い!」とさえ感じる家ができあがった。狭いながらも、建築家がさまざまな工夫をしてくれたおかげだ。

例えば、一戸建ての難点と思っていたことのひとつが、床面積の広さだ。
マンションは基本的にワンフロアなので、床続きでLDKを作ることができる。
しかし、狭小地の一戸建てでは、同じ総平米数でもワンフロアの面積がかなり制限される(7坪ハウスはワンフロアにLDKの間取りは不可能)。
その分、一戸建ては上に積み上げられるので(7坪ハウスは3層)、総面積は稼げるけど、同じ面積のマンションと比べて、どうしても広々とした開放感には負けてしまう。

そういった狭小住宅のマイナスも7坪ハウスは上手に解決してくれた。
実際に7坪ハウスのフロアごとの床面積は狭い。それでも、開放感のある空間にしてくれた建築家には本当に感謝している。
なぜ7坪ハウスは開放感のある空間になったのか、その特徴は以下で書いているの、ぜひ読んでみてほしい。

このように、住み始めてみて「この家は本当によく考えられているな」と感じることが多々ある。
しかも、家を設計・建築したときとは大きく生活環境が変わったにもかかわらず、変化してからのほうがそう感じるのだから、本当に不思議だ。

現在、フリーランスになってみたら、LDKがワンフロアにできなかった設計が一転してプラスに変わった。
会社員時代は7坪ハウスすべてがくつろぐ場所だったけど、今は1日の大半を過ごす2階のDKが仕事場であり、3階はくつろぐ空間として使っている。家で仕事をするようになってからのオンオフの切り替えに、3層の作りは非常に役立っているのだ。

また、週末のお店の営業中も、2階でライターの仕事をしながら、ときにはお菓子を作りながら、お客さんがきたら1階のお店に下りていくというスタイルで仕事をしている。1階と2階が空間でつながっている間取りだからこそ、こんな接客方法も可能なのだ。

2階が兼仕事場になってからは、2階まではパブリックな場所という意識が強くなり、その結果、2階スペースを使ってワークショップもはじめてしまった。

1階はショップと水回り、2階はパブリックスペース、3階はプライベートスペース。どの階からもショップの吹き抜けと大きな棚を通じて、お店の様子がわかる。

猫と暮らしはじめてからは、猫も2階の棚から、お客さんをお出迎えしている。

ライターと店主の仕事、仕事と暮らし、これらの境界線をなくしてくれた7坪ハウスは、小さいのに使い方を限定せず、住人の働き方や暮らし方の変化も、柔軟に受け止めてくれる。

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